2016.06.28
昨年11 月19 日、ラッフルズジャパニーズクリニック・オーチャード分院に日本人医師常駐の眼科が開設された。大切な目に関する症状は早めの診療が鍵となるだけに、定期健診でのアドバイスや病気の治療に関する説明などを日本語で丁寧に教えてもらえるのは心強い。今回は、岡野喜一朗医師にシンガポールの眼科事情や目の健康について話を伺った。
岡野喜一朗医師
東京慈恵会医科大学医学部卒業
東京慈恵会医科大学付属病院眼科助教、医学博士
ケースウエスタンリザーブ大学薬学部リサーチフェロー
厚木市立病院眼科上席医長などを経て2015 年11 月より就任
日本眼科学会眼科専門医
日本眼科手術学会会員
日本網膜硝子体学会会員
日本PDTレーザー認定医
なぜ眼科医になろうと思ったのですか?
もともとは産婦人科医になろうと思っていましたが、研修でいろんなところを体験し、手術でダイレクトに結果が出せて直接喜びにつながる眼科に魅力を感じて眼科医になりました。視覚は人生においてかなり大きなウェイトを占めています。私の祖母は白内障の手術を受けたのですが、転倒で骨折して寝たきりになってしまったこともあり、転倒予防のために目だけでもしっかりしておかないと、と感じたのもきっかけです。
昨年11月の眼科開設によりシンガポールで診療が始まりました。眼科に来られる方で多い症状は何でしょうか?
日本では眼科診療を受けるのは60~80代が多く白内障の手術も盛んに行われていますが、シンガポールでは日本人高齢者の患者は少なく、赤ちゃんから60代くらいまでの患者さんが多いです。診療内容で多いのは、赤ちゃんだと結膜炎や斜視、学童児は近視、10~20代はコンタクトのトラブルや麦粒腫(ものもらい)、霰粒腫(まぶたの炎症)、ビジネスマンはドライアイ、眼精疲労が多いですね。40代では緑内障のケースも多くみられます。
緑内障とはどんな病気ですか?
緑内障は光を受けた神経(視神経)が徐々に死んでしまうことで起こります。初期の頃はテレビのドットが抜けるような感じで、視点(見ているもの)の周りがぼやけて見え、抜け落ちたようになります。ひどくなるとぼやけた部分が広がり、広い範囲で見えない部分が増えてきます。神経は再生できないので、症状が出て診察に来たときにはすでに進行していることがあります。
40代はシンガポールの在星日本人にも多い年代なので注意が必要ですね。緑内障の原因は何でしょうか?
原因は解明されておらず、近視の強い人、家族に緑内障の人がいるとなりやすいとも言われています。日本では40歳以上の20人に1人が緑内障になるというデータもあります。超慢性で進行は遅いのですが、症状に気付きにくいので35歳くらいからは定期的に健診を受けておきたいですね。
日本ではよく耳にする白内障はどんな症状が出るのでしょうか?
白内障の症状は、まぶしい、暗い、にごって見えるなどがあり、60~80代に多くみられます。濁った水晶体をキレイなレンズに入れ替える手術ですが、従来は、遠くはよく見えるが近くは見づらい、または近くはよく見えるが遠くは見えづらいというレンズでしたが、現在はどちらも見える二焦点レンズが採用されています。
白内障や緑内障の手術はこちらでも可能ですか?
白内障などの手術が必要な場合は、ブギスにあるラッフルズホスピタルのアイセンターを紹介します。日本語の通訳やサポートも手配できるので安心です。
身近な病気として注意しておきたい現代病はありますか?
調節障害が挙げられます。近くを見ると目はがんばって物を見ようとするので、スマホやタブレットで近くばかり見ていると、目の筋肉が疲れてしまい調節ができなくなってしまいます。また、まばたきも減ってドライアイになり、見えづらい、涙のノリが悪いという症状が出ます。涙のノリが悪いという症状が出ます。
最近視力が落ちたと感じるときは、この可能性もありますね。
遠くを見るとリラックスした状態になるので、30分近くを見たら5分くらい遠くを見る。メガネやコンタクトの継続使用をやめて目を1日休めるようにする。あとは、スマホの文字がみづらい時は思い切って大きなフォントに設定するようにすすめています(笑)
子どもの目の病気で注意することはありますか?
メガネをかけていても子どもさんが目を細めていたりする場合は、すでに近視が進行していることもあります。ここでは、小児科と連携して4歳児検診を行う予定なので弱視や斜視を早期に発見でき、日本人視能訓練士によるトレーニングを受けることもできます。シンガポールでは思春期までの子どもに有効な近視抑制点眼を受けることもできます。
視力維持のためにも、年齢を問わず検診は大切ですね。
1年に1回の検診(視力検査、眼圧検査、眼底写真)で、神経の厚さから緑内障の可能性などもわかります。日本での経験を生かしてニーズにあわせた診療を行っており安心して帰ってもらえると思うので、一度は検査に来ていただきたいですね。
▼診断を受けたい方はこちらのリンクから!