• 現場読解
  • ビジネス

2021.02.01

【現場読解】

シンガポールや日本を拠点にグローバルな舞台で活躍するリーダーたちが、人生やビジネスについての信念や情熱を語る!世界の未来を担う人たちにヒントをあたえてくれる「オススメの一冊」も紹介。

《第16回》

「日本語が話せるようになりたい」を出発点に、いまやネイティブ顔負けの語彙力と会話力でジャパンデスクを率いるドミニクさん。人を引き込む話術のみならず、努力と情熱が培ってきた人生の話を伺った。

ドミニク・ウォングさん
1988年シンガポール出身
尊敬するリーダー/バラク・オバマ
モットー/Give and be given.

東京海上シンガポール生保
所在地/20 McCallum Street, Singapore 069046
事業内容/貯蓄型保険・積立投信保険・医療保険
連絡先/TMLS Japan Desk(ドミニク・ウォング)
TEL:6325-0717、携帯:8200-6767
E-mail:japan.custsvc@tokiomarine-life.sg
www.dominicjapandesk.com


SPEEDにのめり込んだ少年時代

 僕の子ども時代、シンガポールは日本ブーム最盛期でした。母が夢中で見ていた「おしん」から流れてくる日本語を聞いて、なんてきれいな言語なんだと思いました。それが、日本語についての最初の記憶です。そのうちSPEEDの熱烈なファンに。CDを買って歌詞を見たところで、まったく意味がわからない。聴きながらなんとか理解しようとしましたが、難しい言葉だなあと思いましたね。

 16歳頃、真剣に日本語を学びたいと思い立ち、父親に頼み込んで語学学校に行かせてもらいました。学校の教科書と日本のドラマ、それが僕の日本語学習ツールのすべてでした。そしてついに2週間の日本1人旅へ。福岡から北海道まで、JRパスで旅しました。教科書で習ったフレーズが、あまり役に立たないこともわかりました。

土地勘ゼロの香川県にホームステイへ

 専門学校を卒業後、兵役が始まる前に是非長めに日本に行きたくて、手当たり次第に政府系の奨学金に応募しましたが、なしのつぶてでした。どうしても諦められず、ネットで引っかかるものすべてに連絡しましたね。行けるタイミングが限られていたので、先に航空券を取ってしまっていたんです。いよいよ出発が2週間後に迫った時、ホームステイを受け入れているという香川県高松市の夫婦から返事がありました。ものすごく来にくい場所だけどそれでもいいのか、と。確かに、高松がどこにあるのかどんな場所なのかさっぱりわかりませんでしたが、思い切ったことができるのも若いうちだけと、二つ返事でしたね。

 海外旅行の経験がほぼなかったので、最初は寂しい思いもしたものの、とにかくすべてがエキサイティングでした。実は当時ミュージシャンになりたいと思っていたんです。ホストファミリーが知り合い経由で路上ライブをやっている人につなげてくれて、高松のライブハウスでの出演が実現しました。ずっとカバーばかりやっていましたが、ドミニクの曲はどうなんだ、と言われ作詞作曲も手がけたりしました。知り合いもコネもない土地で、なんでもやってみたいし、やるしかない、という一心でしたね。

高松のライブハウス楽屋で、ライブ前の練習

保険業界初のジャパンデスク発足へ

 兵役後に就職したのは、ヘッドハンティングの会社でした。日本人候補者と会う機会もたくさんありましたが、挨拶程度の日本語で十分。もっと日本語を駆使した仕事をしたいと思っていたところ、東京海上の代理店だった父に、「在星邦人へのサービスに力を入れてみてはどうか」と強く説得され、2012年に現職に転職しました。
 
 当時、ジャパンデスクを構えている保険会社はどこにもなく、立ち上げに一から関わることになりました。邦人の方々に認知度を広めていくプロセスが、とても難しかったですね。

日本人のお客様に接するのが楽しい

 僕が取り扱っているのは、生命保険のほか、主に資産運用を目的とした貯蓄型保険や投資信託ベースの商品などです。在星邦人は約3万人と言われており、その1%がお客様になってくだされば成功していると言えるのではないかと考え、目標達成を目指してきました。他業界で働く友人たちが、「日本人のお客様は求めるサービスレベルが高い」と言うのをよく聞きますが、僕は大変な思いをしたことはあまりありません。医療保険の適用について問い合わせを受けたとき、費用全額が保険でカバーできるわけではないことを、納得してもらえるように説明するのは難しいですが、それは対日本人に限ったことではありません。対人ビジネスなので、相性もあります。自分でいいと思える商品についてきちんと説明し、全力で対応するだけで、あとはお客様のご意向とご判断を大事にすることを心がけています。

2016年、2回目MDRTアニュアルミーティングに参加。この時からプロフェッショナルとしての責任を徹底的に感じるようになった

チームの成長とワークライフバランスと

 1人で始めたジャパンデスクも、今や、日本人2名ローカル3名計5人の日本語専用チームまで成長しました。年齢も経歴も様々なメンバーが、それぞれのやり方でお客様に接することで対応の幅が広がります。チームの利点はどこにあるのか、リーチできていない人々にどうやったらリーチできるか、チームがどうやって成長していけるのか考えていきたいと思っています。

「1人から5人に成長したチームで、在星邦人向けサービスをもっと頑張りたいと思います」とドミニクさん

 実は今、SUSS(シンガポール社会科学大学)で法律を学んでいます。現職を辞め弁護士になる計画はありませんが、大学で培った知識だけでなく、考え方が仕事に活かせるのではないかと感じています。

 この仕事の一番の魅力は、人と接するのがとても楽しいという点です。お客様によって接し方も変わるし、勉強になることも多いです。ハイペースな生活にやりがいも感じますが、燃え尽き気味になることもなくはないので、バランスを考えるようにしています。常に緊急事態には対応できるようにしていますが、帰宅後はなるべく家で携帯を見ないなど、オンとオフを気をつけるようにしています。

オススメの一冊

『Born A Crime』
(Trevor Noah・著、Spiegel & Grau)

「ザ・デイリー・ショー」の司会で知られるトレバー・ノアの自伝です。スイス人の父と黒人の母の間に生まれた彼は、異人種間の結婚を禁じていたアパルトヘイト政策により、存在自体が犯罪でした。暗いイメージの生い立ちが、彼の機転によって面白く描かれています。自分の考え方を貫き、成功を目指した彼のことを思い出すと、インスピレーションを得られます。「People love to say, ‘Give a man a fish and he’ll eat for a day. Teach a man to fish and he’ll eat for a lifetime. What they don’t say is, ‘And it would be nice if you gave him a fishing rod.’ That’s the part of the analogy that’s missing.」という彼の言葉がとても印象的です。学びたくないわけではなく、学ぶ環境すらないということもあるので、何事もまず事情を調べたほうがいい、ということを思い出させてくれます。


取材・文 小林亮子
日本の映画業界で約10年働き2006年から在星。ローカル学校に通う二人の子育てのかたわら、執筆・通訳翻訳業や、バイリンガル環境の子供たちに日本語を教える会社を経営

 
現場読解の記事一覧はこちら:
【第15回】Good Job Creations (Singapore) Pte Ltd Managing Director 芝崎 公哉さん
【第14回】TheONE unicom Pte. Ltd 代表 保坂 美智子さん
【第13回】CROWN LINE (PTE) LTD 代表取締役 宮本 淳司さん
【第12回】EC & Web Consultant 加藤 秀典さん
【第11回】HAKU Pte Ltd, Founder & CEO 坂野 敦郎さん
【第10回】YouTuber/ウェブサイト「シンガポールと熱狂」編集長 Ghib Ojisanさん
【第9回】ココロアートセラピー 芸術心理療法士 松山 さより先生
【第8回】クロスコープ ゼネラルマネージャー 神田 かの子さん
【第7回】ワイン・ウイスキープレイス「La Terre」オーナーソムリエ 川合 大介さん
【第6回】ミューズ サウンド・デザイナー Kazzさん
【第5回】プルデンシャル フィナンシャル・コンサルタント CARPO FLEURISTE 代表 石井くみ子さん
【第4回】リンガフランカホールディングス 代表 藤山 英昭さん
【第3回】EIS インターナショナルプレスクール 園長 峯村先生
【第2回】ビンテージアジア経営者クラブ株式会社 代表取締役 安田 哲さん
【第1回】株式会社ケセラセラ マネージングディレクター 山本 宏次朗さん