2019.12.24
【外国籍人材×日系企業】
近年、グローバル化を図る日系企業が増えている中で欠かせない外国人採用。ただ、外国人採用に関する情報やプラットフォームが乏しいのが現状。企業にとって本当に必要な人材を採用することは難しくなっている。今回は、日系企業の外国人採用を支援してきた株式会社エナジャイズ代表取締役、尾崎氏に外国人採用について迫る。
代表取締役 尾崎 太朗さん
毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)にて国内新卒採用事業に従事。その後、グローバルビジネス自体や組織変革に寄与するニーズが高まると考え、外国籍人財に特化して採用をサポートすることに軸を置いて独立。株式会社エナジャイズを設立。シンガポールには2012 年に法人を構え進出。
株式会社エナジャイズ
所在地/ 〒160-0004 東京都新宿区四谷4-30-18 第2 テイケイビル2F
設立/2009 年
事業内容/ 外国籍高度人材雇用支援事業、人財育成・組織開発支援事業、大学国際化支援事業、海外視察・進出支援事業、多言語翻訳・デザイン/ クリエイティブ事業
www.energize.co.jp
Q 外国人を採用することのメリットは何か、彼らは日本企業に何をもたらしますか。
A1つではなくその目的に応じて複数あると考えます。非常に深く広範囲に渡るのでこちらでは代表的な2 点のみ触れさせていただきます。
①異なる視点、考え、能力、見識を得る:採用する対象となる方がダイレクトにもたらすもの
②組織の意識改革:採用することにより受け入れ組織の方々が得られる異文化に対するマインドシフト
Q 日本企業は外国人学生からどのように見られていますか。
A就職先としてという前提に立つと以下異なる観点から2 点あります。
①何らかの日本の情報を知っていたり、技術や文化に興味や憧れがあっても、就職先としての「日本企業」という集団に対する認知はほぼゼロと
言って良いと思います。たまたま見つけた、あるいは就職する先が日系だったとしても、日系企業という軸でジョブハントするほどのチャネルが安定的顕在化していないためです。その中でASEAN CAREER FAIRwith JAPAN( 以下、「ACF」)は日系企業を目指す登竜門のような存在として大学・学生に認知されてきたことは一定の価値を感じています。
②ステレオタイプな日本企業のイメージは良くも悪くもハードワーカーという点です。大学で講演すると未だに長時間時間外労働やサービス残業への懸念や質問を多く受けますが、労働法の説明のみならず、マネジメントシステムや就労文化、報酬の考え方等を関連づけ、良い悪いではなく背景や意図を踏まえた現実を言葉で説明するようにしています。多くの方はハードワークが嫌なのではなく、どう行動し、どう評価され、働くことでどうハッピーになっていけるのかを具体的に知りたいというアプローチが多いと感じます。
Q 外国人と日本企業の文化の違いは感じますか。それはどんな時ですか。
A①コミュニケーション
スキルとしての日本語以上に、コミュニケーションのスタイルやスタンスの違いが大きくあります。日本は世界でも稀にみる「High Context」傾向の強い文化で、伝えたいことを文字や言葉にあまりせず、会話も構造化されないことも多い点が、文化の異なる人々と意思疎通を図る上でお互いに難易度が高い点です。
②採用スタンス
明確に職務内容をJD で定義し、その範囲内で成果をあげる「ポジション採用」が欧米やシンガポールのみならず世界の多くの地域でスタンダードであることに対して、日本企業は多くが「メンバーシップ採用」で、職務要件以上の頑張りとチーム支援が重要視されます。でもその違いや、期待行動などは明確に言葉で伝えられていないケースが多いです。
Q ASEAN CAREER FAIR with JAPAN(以下、「ACF」)の活動を始めたきっかけは何ですか。
A大阪大学大学院 国際公共政策研究科さんの取り組まれていたキャンパスアジア事業をきっかけに生まれた非営利プロジェクトがACF です。日本と東南アジアの友好の架け橋として、政治外交のみならず若者のキャリアと産業界の雇用ニーズをクロスボーダーで繋ぐことにより貢献していくことを目的として産声をあげました。
Q ASEAN にターゲットを置いた理由を教えて下さい。
A主に4 つあります。
①主要企業の経営戦略上の海外売上拡大エリアの焦点が東南アジアに置かれはじめた
②日系企業の外国籍採用チャネルは中国・韓国が盛んになりつつあったが東南アジアはまだまだ未開の地であった
③依然日本あるいは日本の技術・文化等のブランドイメージが世界でも最もポジティブに捉えられているエリアの1つである
④域内教育レベルの急速な高まり
Q ACF を開催していく上で一番の困難だったことは何ですか。
A初年度開催である2013 年の開催立ち上げです。企業側においては、開催実績がない、域内で日本企業に特化したキャリアフェアの例がない、東南アジアの人材を採用することの意義が顕在化しない等を背景とした様子見。応募者側においては、それまで日系企業への就職チャネルが存在していなかったことにより、興味はあるものの、本当にそんな就職機会があるのかという不信感や、ポップカルチャー等の浅い興味だけで安易に飛びつこうとする方への動機形成、興味を持っていなかった方への認知促進などが挙げられます。
Q 外国人採用に消極的な日系企業に今後どのようにアプローチしていきますか。
A相矛盾するように聞こえる以下2つのことをお伝えするよう心がけています。
①採用だけじゃない:当たり前ですが、採用の目的設定から選考までのみならず、その社員をどう教育し、そして定着してもらう(リテンション)までをどう描いて各社の事情に見合った成果につなげて行くかをご相談します
②スモールスタート&問題解決:とはいえ、受け入れ・教育や活用施策まで完璧に整えるまで待っていても事業環境は刻一刻と変化し、元々の前提条件が変わってしまうこともリスクです。そのため、不完全な状態でも、小さなトライアルから小さな問題解決プロセスを回し、それを少しずつ大きな動きにして行くことをお勧めしています
大盛況の昨年開催のACF in Singapore
学生の受付風景:本イベントでは、来場学生全員に対してインビテーションレターと本人確認を行なっている
イベントの冒頭にて:参加企業様から学生に向けてメッセージを伝えて頂くセッションを設けている。企業からのメッセージを学生が熱心に聞いている
ブースエリアにて:企業ブースを学生が訪問している様子。参加学生は積極的に多くのブースを訪問することができる
会場内の面接風景:面接専用エリアも設置しており、静かな環境の中で企業様と学生の面接が行われる
Q 最後に、10 年後実現したいことを教えて下さい。
Aちょうど2019 年に弊社は10 周年を迎えました。ACF のみならず、ロシア、アフリカ、南米等も含めたクロスボーダー支援の機会も多数増え、文化や慣習は違えど、確実に1グローバルでの物の見方は進んできていると感じます。それ故将来的には「ASEAN の人財」といった括りでの物の見方は薄れ、世界中で個の特性を踏まえた人財の流動化が進むと考えています。だからこそ10 年後には、世界が近くなることで起こりやすいビジネスやコミュニケーション上の障壁を世界中で解決するソリューションプロバイダーとして活動できる存在になっていられたらと思います。
ASEAN CAREER FAIR with JAPAN in Singapore
シンガポールで行われるASEAN 諸国の大学に学ぶ外国籍学生とグローバル化する日本企業のニーズのマッチングをサポートするキャリアフォーラム。
2020 年2 月8 日(土)に第8回を開催予定。