2017.02.17
シンガポール島内に、ここ数年欧州スタイルのパン屋さんが続々とオープンしている。そこで、人気店で働く職人3 人 にインタビューを実施。柔らかい種類が主流だった昔に比べ、硬めの種類が存在感を強めている昨今。現場ではどんなシーンが見えているのだろうか。
カフェ文化がローカルへの欧州パン浸透を手助け
小麦なども最高級のものを使用しているので、味も食感も他とは違います! (パン職人のIrish さん、写真左)
クロワッサンやデニッシュなどを購入する近隣で働く人達の姿も
香りのよいコーヒーとパン、居心地の良い空間を提供している
軽食を楽しむ客やパンを買いに来る客で1 日中賑わう同店。「シンガポールになぜ欧州スタイルのパンが受け入れられ始めたのか、それはカフェ文化が発展してきたからというのも1 つの要素です。パン屋はパンを買いに行くだけの場所という従来の考えから、雰囲気を楽しんだり、パンやコーヒーの良さに気づく人が増えたのではないでしょうか」とパン職人のIrish さんは語る。厚くもっちりとした皮が特徴的なフランスのLevain(ルヴァン)種という天然酵母を使った伝統製法で作られるパンは、欧米系の客やローカルにもその美味しさが根付き始めている。
ヨーロッパと変わらぬ味を再現したハラルベーカリー
サルタンモスクそばに2016 年10 月にオープン。日本での就業経験もあるパン職人のAhmad さんは、イーストを使わず、フルーツやケフィアを使った天然酵母のパンを作っている。「ローカルのパン屋より高い価格設定ですが、これはイーストを使わずにパンを自然発酵させ、時間を掛けて作っているからです。材料も輸入しており、シンガポールでもヨーロッパと同じ味を提供しているので、どうしても大量生産のものよりは値が張ってしまいます。また当店のパンはハラルなので、マレー系のお客さんも多く人気ですよ」と答えてくれた。
食事の時間を楽しむ現代、欧州パンの需要も増加
シンガポールの気候だと発酵が早いので、ヨーロッパの気候に近い温度で作っています (オーナーのNick さん)
ドイツと日本産の小麦を使用しているそう
発酵食品が好き、と熱く語ってくれたのは、同店パン職人のNick さん。前職でスウェーデン人の上司とともにヨーロッパ各地を回るうちに、欧州スタイルのパンに魅了され職人になったそう。シンガポールでは、なぜ柔らかなパンが以前まで主流だったのか聞いたところ、「世界で最も忙しい国のシンガポール人たちは、毎朝の通勤、通学や仕事の合間に手軽にサッと食べられる柔らかいパンを求めたのでは。欧州や日本のように、『食事の時間を楽しむ』習慣が出来始めた今日、ハードな欧州パンを食べる人達も少しずつ増えてきているようです」と教えてくれた。