2022.02.25
臨床活動とともにさまざまな大学で研究活動を行ってきたカイロプラクティックのドクター、河合智則さん。その経験から「エビデンスに基づき、患者に寄り添うこと」を大切にしている。
そんなDr.河合に、巷で話題の「筋膜リリース」と「骨格矯正」について話を伺った。
Dr. 河合 智則
Doctor of Chiropractic
スポーツ科学とリハビリテーションの修士号
認定カイロプラクティック・スポーツ・フィジシャン
国際カイロプラクティック・スポーツ科学ディプロム取得
認定カイロプラクティック・スポーツ・フィジシャン
A.R.T.(アクティブ・リリース・テクニック)認定プロバイダーなど
《書籍・雑誌》
「デスクワークの肩こり、腰痛、身体の疲れを取る」
(実務教育出版社)
「Tarzan」定期コラム 651 ~ 667号など
[研究活動]
東京農工大工学部、慶應義塾大学医学研究科、東亜大学人間科学部で、論文や国際学会発表、専門誌寄稿など多数。
研究分野:スポーツ医科学、筋骨格系障害、筋膜(Fascia)、筋タンパクなど
《筋膜リリース》
今では一般的になった「筋膜リリース」という言葉。鶏肉の薄膜のようなものをベリベリと剥がすイメージを持っている人も多いでしょう。しかし、これには誤解もあります。
筋膜の元の言葉「Fascia」は、広義と狭義の意味合いで議論はありますが、一般的には「全身にある臓器を覆い、接続し、情報伝達を担う線維性の網目状組織構造。臓器の動きを滑らかにし、これを支え、保護して位置を保つシステム」と定義されています。つまり鶏肉の薄膜みたいなものだけが筋膜(Fascia)ではありません。そのため、Fasciaを筋膜と訳すのは誤訳と考えられています。
網目状組織構造というのがポイントです。この構造の中には先程の鶏肉の薄膜を構成するコラーゲンなどの繊維や、Fasciaを滑らかにするヒアルロン酸などが含まれます。
「筋膜リリースは、薄膜をベリベリと剥がす」というイメージから、ローラーを強く押しあてていた人もいるでしょう。しかし、膜自体は簡単に柔らかくなるものではないので、それによってFasciaが柔らかくなるものではありません。むしろ強く刺激する
のはダメージを残す恐れがあるので、注意が必要です。
とはいえ、ローラーで刺激を与えることは決して無意味ではありません。適度な圧を与えたり、ストレッチなどで伸ばすことで網目状組織構造の水分が滑らかになり、身体の状態を維持してくれます。正しい方法で行えば、日々の健康づくりに役立ちます。
《骨格矯正ー歪みと姿勢》
骨格矯正というと、「だるま落とし」のようにコンと叩いてずれを治すと誤解されています。しかし、そのようなことは構造的に起こりえません。先天的な歪みや外傷などによるずれを除いて、一般的に身体がずれる、歪むというのは、歪んだような「現象」、「状態」になっているということです。
我々の身体は、「私の身体の位置はこうですよ」「こういう姿勢ですよ」という認識が背骨周りの受容器というセンサーからインプットされ、脳とキャッチボールをして自分の姿勢を把握しています。歪むというのは、そのインプットの低下なのです。
常にスマホを見ていて背中が丸まっている子どもに「背筋を伸ばしなさい」と言ってもよくならないのは、多様なインプットが低下していることに加えて、丸まった「状態」として悪い姿勢のインプットを自分の姿勢として認識してしまっていることが考え
られます。遊び、運動の延長で様々な方向性や多様な刺激によって身体を動かして脳に刺激を届けることが必要です(実際、子どもの場合は姿勢矯正よりもボール遊びの方が効果がある場合が多いです)。
では、骨格矯正は何をしているかというと、難しい言葉になりますが「求心路遮断」といって、背骨などに刺激を与える、つまりインプットに他なりません。身体の構造を無視した強烈な刺激を与えたり、インプットが低下している状態で筋肉を過緊張させ
て無理に姿勢を正しく保とうとしたりするのは逆効果の場合もあるので注意が必要です。
もう一つ、エビデンス上疑問視されていることがあります。それは、姿勢自体が痛みや症状につながる、ということです。悪い姿勢は身体のメカニクスを変えることもありますが、それ自体が痛みの元になるわけではありません。しかし、良い姿勢でいるこ
とは、見る人に良い印象を与えるのも事実です。適切なインプットを加えて、動きやすく良い姿勢を維持したいものです。
身体のメカニズムに基づいた正しいインプットを与えると身体は変わります。
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