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2020.09.01

J+PLUSスペシャルインタビュー

群雄割拠のシンガポール飲食業界の中で、斬新なアイディアで挑み続けている松本氏。流行語にもなった「女子会」は何を隠そう日本で大手飲食チェーンにて働いていた時代に松本氏が考案したものだ。シンガポール進出後も「和食五縁」「焼肉王」「魚王魚王」をオープンし、今やローカルにも絶大な人気を誇る飲食店に成長している。そんな彼が満を持してオープンする「個室居酒屋 まつもと」。本誌ではこのコロナ禍に置いても進み続ける松本氏を次号と二回に渡って取材する。


J+PLUS(以下「J」):オープンおめでとうございます。新店舗「まつもと」とはどんな店?
松本氏(以下「松」):「まつもと」は、タンジョン・パガーに今年8月末にオープンした個室居酒屋です。総席数は50席で10個の個室(完全個室と半個室タイプ)があり、海鮮からお肉まで楽しんで頂けます。基本的にはビジネス目的のお客様を対象にしていますが、あまり人に見られたくないシチュエーションでも使って頂ければと思います。男女の密会なんかにも最適です。(笑)

J:なぜ新店舗にご自身の名前「まつもと」をつけたのか?
松:今まで様々な飲食店を手がけて来ましたが、実はこの店はおそらくシンガポールで仕掛ける最後の居酒屋になると思っているんです。「まつもと」という名前にしたのは立地上、よく比較される日本人経営者のお店が横並びにあって、彼らも自分の名前の店を出しているので、僕も自分の名前を付けただけです。大きな意味はありません。

J:これまで焼肉、海鮮と来てなぜ今回「個室居酒屋」?
松:ずっとこの国には個室があるお店が少ないと感じていました。新店の業態を考える時には常に市場の需要と供給の乖離と、自分自身が消費者として納得行っていない部分に着目します。例えば、焼肉王をオープンさせた当時、シンガポールで焼肉を食べれば一人あたり100〜150ドルが当たり前だった。和牛を使ってなくてもそれくらい取る店もある。でも日本では一人 5,000円出せばうまい焼肉が食べられるじゃないですか。「魚王魚王」を作ったのは、ずっとシンガポールでの日本の海鮮料理が高すぎると感じていたからです。僕は日本食を大衆化したい。だから良いものをリーズナブルに提供する事に拘っています。そして今回は食のジャンルではなくこの国にない「空間」に着目しました。

J:シンガポールで「個室文化」は受け入れられると思うか?
松:言葉では説明し辛いのですが、自分の中で問題ないという感覚はある。確かにこの国にはまだ「個室文化」がありません。ただ日本だって昔は個室なんてなかった。それがあっという間に広がって個室居酒屋だらけになった。シンガポール人の民度は日本から少し遅れていて、ようやく追いついて来ている。だから一度「個室文化」を知れば、すぐに普及すると思っています。一つのヒントになったのは、カラオケがこの国で普及した事。だから「個室」自体に対する違和感はないはずです。

J : 松本氏のお店はなぜローカルにもウケるのか?
松:僕の出したお店は、日本人も来て頂けますが、大半はローカルのお客さんです。居酒屋の店舗経営では、絶対成功するという僕なりの設計図があります。どの店もその設計図に則って展開しています。ローカルを増やす上で大事なことは大きく分けて二つあって、一つ目は、日本人に多くご利用頂く事。日本人がいる日本料理屋は信用されます。例えば日本でインド人がたくさん訪れるインド料理屋があったら、行かずとも「本格的」だという印象を持つでしょう。 もう一つは逆張りの発想とSNS拡散。例えば、カレーライスを出した時も、あえてメニューの商品画像を本物より小さく見せる事で、実際に来た時に驚きとお得感を演出させ、自然とSNSで広がる仕組みを作ることができるんです。

J:1業態1店舗の法則で店舗経営をしていると言っていたが?
松:大手以外の飲食店はこの国ではチェーン展開すべきではないと考えています。この国のマーケットは小さいため、新業態のお店を作ってもすぐに真似をされて食い合ってしまいます。チェーン展開をしても1店舗当たりの収益性が落ちるだけで、お店のクオリティ維持の面からもマイナスが大きい。またシンガポール人=「お金持ち」という印象がありますが、一部を除けば、食事など生活必需品にはそこまでお金をかけない。日本のように全身ブランドで固めている人って少ないでしょう。簡単にいえば、日本の年収300万円の人が、ディナーに8,000円もかけないようなもの。価値あるものは出すけれど、チェーン店のようなコピペに価値を感じ辛いと思っていますね。だからうちは1業態1店舗。その代わりにしっかりとお客さんに来てもらえるように各店舗を徹底して管理しています。

・・・次号に続く
J+PLUS 10月号掲載の第二回目では、飲食経営者必見。松本氏の飲食経営戦略をより深掘っていく。乞うご期待。


個室居酒屋 まつもと
住所:1 Tras link, #01-16O Orchid Hotel, (S)078867
TEL:6444-2488
営業時間:11:30〜23:30(政府の指示がある場合は、政府の営業時間に基づく)