2024.12.27
今、シンガポールで注目されている食品「Novel Food」について、食に精通するAlchemist Pte. Ltd.のケルニン 青木康子さんにお話を伺った。当地でも実験的な取り組みが進んでいるが、実際の需要や消費者の反応はどうなのだろうか。現状と今後の課題について語ってくれた。
新年ですね!
新年ということで、少しNovel Food(新規食品)のシンガポールでの様子をご紹介させていただきますね。
シンガポール食品庁(SFA)のブース。Novel Foodの調理実演もシンポジウム中に開催されていた
写真:いずれも「Agri-Food Tech Expo Asia 2024」にて撮影
そもそも「Novel Foodって何だろう?」と思う方も多いかと思います。Novel Foodは新規食品と日本語では訳されますが、その名の通り、新しい食品になります。
Wikipediaによると、「1997年5月15日以前にEU内で人間によって相当量が消費されていなかった(つまり、ほとんどあるいは全く消費されていなかった)食品、または食品原料を指す概念」と記載されております。簡単にまとめますと、これまでなかった新しい原料(昆虫、培養肉、代替肉等)、新しい加工方法を用いた食品(3Dプリント)、遺伝子組み換え食品、新しい栄養素などのことを指します。
シンガポールでは昨年5月に、Good Meatから培養肉の小売店舗での販売(100%培養肉が使用されているわけではく、使用率は数パーセント)が始まり、7月には16種類の昆虫が食品として認可されました。いよいよ培養肉や昆虫食が本格的に市場投入されていく感がありますね。個人的には今年は、Novel Foodの存在感がよりシンガポールで増してくると思います(ただ、培養肉小売店舗販売は1店舗限定であり、まだ浸透というよりも実験的な意味が強いかとは思います。また、昆虫食も実際に昆虫食メニューを売りにしたレストランは1店舗で、昆虫を食材とした加工食品自体もまだまだ数は少ないです)。
日本の昆虫食スタートアップMORUSUからは、蚕由来のサプリの展示
因みに、代替タンパク質肉は、シンガポールでは珍しいものではなくなり、一般のレストランでもメニュー点数としては少ないですが、メニューに取り入れている店舗が多いですね。また、小売店でも冷凍棚には一定数販売されていますね。きっと試された方も多いのでは?
ただ、シンガポールでの飲食店の方々と、代替肉消費量について話す機会があったのですが、お話した5店舗は、どこも需要は少ないものであるとの回答でした。某店舗ではコロナ禍中は、世界環境に目を向ける人が多く、お肉の料理20%の売上が代替肉であったのが、現在は5%もないとのこと。プラントベース肉への興味対象は一巡して、本当に必要としている層しか、注文しない傾向にあるとのことでした。
Ha Li Fa Pte Ltdの、プラントラントベース・フィッシュペーストフライの試食
やはり消費者にとって大事なのは、「美味しさ」であるとの事。
私自身も、食に携わるものとしては、美味しものが好きです♡ Novel Foodには、まだまだこの美味しさというものが不足しがちで・・・・美味しいNovel Foodがあったら良いな~とは常々思っています(勿論、これからの伸びしろは無限大と感じていますが)。
シンガポール政府もNovel Foodの「美味しさ・風味」を強化したいと思っているようです。昨年11月にシンガポールではSingapore International Agri-Food Weekの期間に「Global Agri-Food Scientific Symposium」が開催されていました。このシンポジウム内で、シンガポール環境・持続可能性担当上級大臣コー・ポー・クン氏は、「消費者向けによりおいしく、栄養価の高い新しい食品の開発に向けて取り組むために、研究機関、民間企業から食品の味の向上開発に向けた提案を幅広く募集する」ことを宣言
していました。
これは、シンガポール食品庁(SFA)が11月21日に発表した助成金の内容に基づいています。Novel Foodが、味、香りの点で、消費者により受け入れられる食品になること、また栄養価が従来のタンパク質と同等またはそれ以上になるものを目指すための取り組みで、対象者は助成金を得ることができます。
展示会に参加していた、住友理工株式会社から出ている細胞農業スタートキット
この発表を聞き、「いよいよNovel Foodも味・栄養価も兼ね備えた商品が、生まれるかもしれない!」と、ワクワクしてしまいましたが、皆さんはどうでしょうか?環境にも良く、味・栄養価にも優れた食品・・・・夢がありますね!
みなさんの周りにもNovel Foodの情報があったら、ぜひ教えてください!
ケルニン 青木 康子(あおき やすこ)さん
食のイベント会社Alchemist Pte. Ltd.代表。シンガポールでメディア会社に7年勤務後、「食」を通して人と人、社会と社会をつなぐ食のイベントブランドAlchemist Pte. Ltd.を2014年に起業。ライフワークとして、シンガポール料理の調査と研究を手がけている。
www.alchemist.sg