2017.02.24
福島の子どもたちを追った短編映画『MARCH』が上映
福島第一原発から25.3kmの福島県南相馬市。そこで活動する小中学生のマーチングバンドの姿を追った短編ドキュメンタリー映画『MARCH』が、シンガポールで2月26日(日)初上映される。今年2月にイギリス・ロンドンで開かれたInternational Filmmaker Festival of World Cinema LONDONで「最優秀外国語ドキュメンタリー映画賞」受賞の快挙を果たした本作。制作のきっかけから現在の思いまで、プロデューサーの“ちょんまげ隊長”ツンさんに話を聞いた。
福島でがんばる子どもたちの姿を伝えたかった
「福島の子どもたちのがんばりや、元気な姿を伝えたいと思ったんです」
映画『MARCH』製作の動機をそう語るツンさん。ちょんまげと甲冑がトレードマークの本作のプロデューサーだ。もともとはサッカー日本代表のサポーターとして日本国内だけでなくブラジル、南アフリカ、中東やヨーロッパへ応援に行くことをライフワークとしており、サッカーファンの間では一部知られた存在だった。そんなツンさんが、なぜ被災地支援ドキュメンタリーを制作することになったのか。
「2011年の東日本大震災発生後、宮城へボランティアをしに訪れたんです。僕は千葉で靴屋を経営しているのですが、靴を持たずに逃げたため足をけがしている被災者が多くいると報道で知り、ならばと思い、1度だけのつもりでありったけの靴を持って宮城の避難所へ行きました」
そこで目にした光景は、体育館で避難生活を送る人たちの姿だった。
「僕の娘が当時小学2年生だったのですが、同じ年齢くらいの子どもたちも体育館で寝泊りしていて。それを見てすごく悲しくなりました。『また来るよ』と出会った方々と約束をして、その繰り返しで気がつけば宮城への訪問は100回ほどになっていました」
号泣を通り越して、嗚咽するほど鳴いてしまった
一方で実は、最初の2年間は福島を訪れることが一切なかったのだという。
「お恥ずかしい限りなのですが、無知だったんです。福島に行けば放射能が自分の体についてしまうのではないかと誤解していて。帰宅後自分から娘にうつるんじゃないか、といったことを勝手に心配していました」
当時はあらゆる情報が錯綜していたため、ツンさんのように誤解をする人は少なくなかった。そんなある日、ツンさんは福島県南相馬市の小中学生によるマーチングバンド「Seeds+(シーズプラス)」の演奏会に招かれる。震災による混乱の中でも、音楽を続けることを諦めずに活動しているのだと聞き、訪れることに。そして、子どもたちのたくましい姿を目の当たりにし、衝撃を受ける。
「僕がこれまで避けていた福島で、やりたいことを諦めずにがんばっている子どもたち。号泣を通り越して嗚咽するほど鳴いてしまいました。それで、何か僕にも役に立てることがないかと考えたんです。青空と芝生の上でのびのび演奏させてあげられないかと、周囲へ支援を呼びかけました」
2014年、愛媛FCの広大なスタジアムでの演奏が実現
サッカーで培ってきた国内外のネットワークを生かして幅広く呼びかけを行ったところ、手を挙げたのが愛媛県のプロサッカーチームである愛媛FCだった。スタジアムの試合前の前座として、「Seeds+」に演奏してほしいと招いてくれたのだ。もちろん旅費などは負担してくれるという条件。
「それが2014年でした。その時スタジアムで見た子どもたちの演奏が、本当に素敵だったんです。すぐに『もっといろんな人に伝えたい』と考えはじめて。同時期に愛媛FCさんにも『来年も呼びます』と約束してくださって、僕もこれまで以上に全力で取り組まなくてはと思い、映画化を思い立ちました。それでサッカー界で有名な監督である、中村和彦監督に話をしに行きました」
中村和彦監督が加わり、映画化へ向けて本格始動
中村監督は、サッカーを題材にしたドキュメンタリー映画で有名な人物。「文化記録映画優秀賞」や「山路ふみ子映画福祉賞」などを受賞した経歴を持つ。
「中村監督に力を貸して頂けないかと門を叩いたところ、『東北のために僕もあまり何もできていない。これも縁だと思うので、やりましょう』と快諾してくださいました」
撮影は2015年の2度目となる愛媛での演奏の準備の時期からスタート。中村監督とツンさん、互いの意見を交換しながら制作が進められて行った。だたツンさんは映像に関しては素人なため、実はぶつかり合うこともあったのだそう。
「今思えば、僕は映画製作の大変さを理解していなかったんです(笑)。キレイな部分を撮影すればOKだと考えていた僕に対し、中村監督は『笑顔の裏にあるものをちゃんと取材しないとダメなんだよ』と、映画にすることの深い意味について、教えてくださいました。一方で僕は技術的には素人でも、内容に関してゆずれない部分もあったりするので、互いの意見を巡ってかなりやり合うことも(笑)。でもそれは、2人が真剣に向き合っている証。だからこそ完成を観た時は納得感でいっぱいでした」
2016年2月、遂に短編映画『MARCH』が完成
映画『MARCH』が完成したのは、2016年2月。福島の子どもたちの明と暗、すべてが詰め込まれた見事な短編映画に仕上がった。
「監督すごいな、の一言です。メインテーマである子どもたちの元気な姿はしっかり入っているし、笑顔の裏の大変な部分も丁寧に映し出されている」
完成後は少しずつ全国で試写会を行い、最近では海外からも声がかかるようになりはじめているのだそう。今年2月のInternational Filmmaker Festival of World Cinema LONDONでは「最優秀外国語ドキュメンタリー映画賞」を受賞した。そして2月26日(日)、いよいよシンガポールでの上映会が実現する。上映前にはシンガポールの子供たちが縁で、行った熊本地震への支援報告や福島の現状報告と映画の説明も行われる予定だ。
「夢を諦めない子どもたちの姿に、心を打たれたという声が多く寄せられています。子どもから大人まで、とにかく観て、何かを感じて頂けたら何よりです。1人でも多くの人に足を運んでいただけたら嬉しいです」
【東日本大震災復興支援チャリティ映画『MARCH』上映会・ちょんまげ隊長ツンさん講演会「あれから6年」】
映画『MARCH』
未だに復興復興道半ばの被災地の様子
シンガポール初上映となる、短編ドキュメンタリー映画『MARCH』の上映会と、サッカー日本代表のサポーターでありながら、被災地支援活動を継続しているちょんまげ隊長ツンさんの「被災地報告会」が、東日本大震災復興支援チャリティイベントとして開催されます。
映画『MARCH』とは?
福島第一原発から25.3km、福島県南相馬市で活動するマーチングバンド「Seeds+(シーズプラス)」は、東日本大震災による地震・津波・原発事故の混乱のなか、音楽を続けることを諦めなかった小中学生のバンド。「青い空、緑の芝生の上で演奏してもらいたい」。そんな彼女たちをサッカースタジアムへ招待し、試合の前に演奏をする機会を作ってくれたのは、愛媛県にあるJリーグチームだった。公式戦にも関わらず、サポーターが南相馬を応援する光景や、この日のために真夏の体育館で必死に練習するSeeds+の勇姿は、観る人の心に響くはず。
福島の今(明と暗)、音楽とサッカーの素晴らしさ、夢を諦めなかったSeeds+の演奏の様子を、この「日本初の復興支援映画」を通して、ぜひ皆さんの目でご確認ください。26日(日)の上映会の全額は、南相馬マーチングバンドSeeds+の活動基金、映画『MARCH』を全国に届ける支援に使用されます。弊社COMM、J+PLUSがメディア協賛しております。
企業協賛(順不同、敬称略)
ばり嗎、英進館、EIS、JAPAN AIRLINES、KOMABA、LA DITTA LIMITED、西野薬局、Studio Miu Art
日時:2月26日(日曜) 開場15:30、講演・上映会16:00~17:30
場所:シンガポール日本人会館(オーディトリアムルーム)
内容:「あれから6年・・・…」被災地の報告
入場料:大人S$10、高校生以下S$5、未就学児無料
主催:Smile for Nippon
お問合せ先:yuiproject311@gmail.com (担当:石川)
本上映会開催で募った支援金は、開催費用を除く全額が南相馬マーチングバンドSeeds+の活動基金、及び映画MARCHを全国に届ける支援に使用される。