2017.01.30
シンガポールに在住の皆様に、ぜひ知っておいていただきたい医療や健康に関するさまざまなトピックを、ラッフルズ・ジャパニーズクリニックの日本人医師が、図表やグラフなどを交えてわかりやすく解説します。
心の理論 ①
近年話題の『発達障害』。
知的には遅れがなくても、発達過程における、社会性の獲得、注意や行動のコントロール、読み書き算数の学習などに問題があると、社会に適応しにくく、社会生活が困難にな るため、『障害』と呼ばれます。
『自閉症スペクトラム障害』もその一つで、従来、別々に診断されていた自閉症やアスペルガー障害、広汎性発達障害などを包括した疾患概念です。その問題の中核は「社会性の障害」です。
社会性の基本は、他人の考えや気持ち、すなわち心を理解すること。心理学的には、『心の理論』を持っていると言います。 下記は心の理論の発達をチェックす る簡単なテストです。
〈サリーとアンのテスト〉
⒈サリーはバスケットを、 アンは箱を持っている 。
⒉サリーはおはじきをバスケットに 入れて外に出て行った。
⒊その間にアンはおはじきを バスケットから箱に移した 。
質問: 戻ったサリーはおはじきがどこにあると思って探すか?
正解は「バスケット」ですが、心の理論が発達していない子は「箱」と答えます。 サリーの気持ちや立場になって考えることが困難だからです。また、おはじきの動きだけに集中してしまうため、全体像を見失いやすいという特徴もあります。
通常、このテストは4から6歳で通過しますが、知的に正常な11歳前後の自閉症児の場合、2割の正答率です。ただし、「正答できない=自閉症」とは即断できませんので注意が必要です。心配な場合は御相談ください。
今回の担当ドクター
副院長 元田 玲奈 医師 (医学博士) Dr. Motoda Rena
東京大学医学部卒業 東京大学大学院医学系研究科修了。医学博士 。2008年10月より現職。
日本小児科学会認定小児科専門医
日本小児神経学会会員
小児科医会認定「子どもの心」相談医
情報提供: ラッフルズ・ジャパニーズクリニック
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