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2022.02.25

Youth Report by NUS

シンガポール国立大学(NUS)語学教育研究センター(CLS)LAJ4203 Newspaper Readingの日本語履修生が日本語で様々なトピックを綴ります。


水素ブーム – 今水素が熱い!

 シンガポールを空から見下ろしてみるとしよう。地面に生い茂る樹木に目を留めれば、この国が何故庭園都市と呼ばれるかが直ぐに分かるだろう。だが、太陽の反射でピカピカと光る摩天楼を見ながら、地面へとおりていくと、まるで都市の血管のように市民を運ぶ数え切れないほどの自動車が道路を走る。深く息を吸ってみると、悪臭に襲われる。それは、有毒な一酸化炭素や燃えていない炭化水素などを含んだ排気の臭いだ。大気汚染の深刻さを実感せざるを得ない。

 そこで、大気汚染の解決策として、二酸化炭素を排出する化石燃料に代わり、空気の清潔さを保つ水素が燃料として注目されている。電気分解を通して水の成分である水素と酸素を分離すると、エネルギーが取り出せる。そのプロセスは、有害な空気を排出しないので環境に悪影響を与えない。それに加え、地球上に大量にある水を使うため、持続可能性も上回っている。

 水素燃料の技術は着々と進歩している。例えば、トヨタ自動車は、水素を使って発電しモーターで走るFCV=燃料電池車を販売している。また、水素を燃焼させて動力にする「水素エンジン」の開発も進めている。また、航行中に大量の二酸化炭素を排出する船舶も、国際海事機関(IMO)は環境規制を強めている。よって、川崎重工業は二酸化炭素排出削減を目指し、今年1月に世界で初めて重油の代わりに水素を動力源とする大型船の建造を開始した。

 今後も水素燃料の生産技術の向上が見込まれることを踏まえ、多数の投資家が近頃、水素燃料の会社に投資しているのが明らかになった。水素燃料電池システムの米企業プラグ・パワーなどの会社にアマゾンなどが投資し、株価が2000%以上も上がったという。

 では、水素燃料の利点は以前から明らかなのに、今なぜ投資がここまで増えて来たのだろう。水素燃料への過剰な投資はバブル経済を生じさせる恐れさえある。それに加え、大量の投資が流れているのは技術の優れている会社ではなく、 広告や様々なオンラインプラットフォームなどを通じ、 投資家に興味を持たせることに成功した企業だ。

 シンガポールの道路に戻り、車の排出した温室効果を速める一・二酸化炭素を、無害な水素と酸素に換えてみよう。悪臭のないきれいな空気により病気が治り、健康的な生活が営める世界。気温低下により涼しく快適になった世界。複数の生態系が復活した豊かな世界。水素燃料を使い始めるのはそんな世界への一歩となるだろう。また、ほかの一歩として、道路の下に、圧電体を設置し、圧電効果で道路の上下運動により電力を作るなどのアイデアが次々と私自身浮かんできた。
 


スン・ユー・シャン
私はスン・ユー・シャンと申します。今年シンガポール国立大学科学部物理学科の三年生で、副専攻は日本研究です。並びに、NUS語学教育研究センターの日本語プログラムで日本語を履修しています。日本語を学び始めたきっかけは、初めアニメや日本製のゲームなどを好んでいたからです。それから、日本の文化や料理などを体験するにつれ日本語に興味を抱くようになりました。NUSで日本語の授業を受ければ受けるほどその学びが更に楽しくなってきました。
 
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