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2020.12.31

サーキットブレーカー(CB)が明けた後、コロナ禍で海外に旅行に行けないシンガポールでは政府の後押しもあり、「自国の文化を再発見する」シンガポールリディスカバリームーブメントが起きています。昨年の今頃は誰もが予想をしなかった展開です。

5冊の料理本も出しているフィリップ・ チアシェフ(写真中央)のお料理はどれもスパイスの利かせ方が絶妙


そんな中、伝統的なプラナカン料理にもスポットライトがあたっています。今年の8月に開店したばかりの「The Real Peranakan」は今後プラナカン料理の代名詞になる可能性のあるレストランです。プロデュースを手掛けたのは大ヒットを記録したシンガポールのテレビドラマ「リトル・ニョニャ」で料理監 修を務めたシェフ、フィリップ・チア。6歳で料理に興味を持ち始め、17歳でSime Darby’s料理コンテストで優勝、多くのホテル、高級レストランで腕を振るい、高い評価を得てきた実力派シェフです。フィリップ氏に今回の開店についての想いを伺いました。

「プラナカン料理の担い手を育てたい。レストランの名前にあるように、本物の 味を次世代に継承してほしいのです。プラナカン料理のフュージョンを出すお店も多いですが、私はまず、伝統的なプラナカン料理を伝えたいと考えています」

開口一番にシェフがそう話してくれたのには理由があります。プラナカン料理に馴染みがある日本人は少ないと思いますが、ローカルの間でもプラナカン料理は一部を除き、特別感のある料理になります。本格的なプラナカン料理の調理は時間も手間も非常にかかり、プラナカンを極めようとする若手の料理人は少ないのが現状です。現在フィリップ氏は少ないながらもシェフの元に集った若手シェフへの教育に力を注いでいます。

ブアクルワの実を使った料理 AYAM BUAH KELUAK(写真右端上S$20.80)は仕込みに5日間もかかる、プラナカンにはかかせない伝統料理


レストランの開店計画は数年前からあったものの様々な理由により進まず、逆にCBを避けることができての開店となったそうです。満を期して開 店したレストランはすでに多くのメディアから注目を浴び、若年層からシニア層まで来店客を惹きつけています。すでに2店舗目も開店し、今後島内で合わせて5店舗を展開するのが目標で、日本を含む海外の店舗展開も視野にいれているとのことです。

レストランのあるHerenciaはバー、シェアオフィス、雑貨屋もある


コロナ禍の影響で内需需要が高まり、自国の良さを再度学ぼうと、伝統的な食にも注目が集まってきている中でのレストランの開店。フィリップシェフの熱い想いが、タイミングよく伝播できそうで、今後の動向が個人としてもとても楽しみです。

The Real Peranakan
46 Kim Yam Road, #01-05/6/7, The Herencia, Inside Crane Club (S)239351
Tel: 9783-1118
(73 Hillcrest Road .(S)288945もあり)
www.therealperanakan.com

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ケルニン青木康子 さん

食のイベント会社Spoonful代表。シンガポールでメディアに7年勤務後、「食」を通して人と人、社会と社会をつなぐ食イベントブランドSpoonfulを2014年に企業。ライフワークとして、シンガポール料理の調査、研究を手がける。