2020.08.31
前回お伝えしたように、屋外での鶏の平飼いはシンガポールで禁止されており、養鶏も鶏卵施設もすべて屋内にあり、輸入する際の条件も同様です。主要施設はハイテク生産技術を取り入れ、まるで「卵の工場」のようです。えさの管理、 掃除も含めて機械の導入が進められていおり、日本同様、血卵を好まない消費者がいる為、赤外線を当てて血が混じった卵を除去したりもしています。
シンガポール産の「生食向け」用の卵
DONDONDONKI、さくらや、J-Mar、明治屋など、主な日系スーパーで販売されている
鶏卵場にはSFA(シンガポール食品庁)の検査がランダムであり、国の厳しい衛生基準をクリアしないと出荷できません。その分、値段はマレーシア産のものに 比べて高価になります。マレーシア産のもは安いですが、シンガポール国内生産ほどの衛生基準管理に置かれているわけではないです。以前マーケットで購入した時に、一個腐ったものが混じっていたことがありました。卵を割るときはまとめて同じボウルに割り続けていくのではなく、一個づつ小鉢に割って確認してから、ボウルに入れると安心です。
またいずれの場合も、気を付けなればいけないのは、サルモネラ菌です。サルモネラ菌は母鶏の体内からの感染がそのまま鶏卵の殻に付着します。私はシンガポールに来たばかりの頃に、サルモネラ菌による食中毒経験したことがあります。大変激しい腹痛、嘔吐にみまわれました。あの痛みは半端ないものでしたので、防げるなら防ぎたいものです。
感染を防ぐ為には、鶏卵は常温で販売されているものでも購入後は冷蔵庫に保管し、菌の繁殖を防ぎましょう。また卵の殻が他の食材と接触しないようにし、鶏卵を触ったらすぐ石鹸で手を洗い、十分に加熱して食べることが大事です。そして賞味期限は長くても、やはり生ものです。早めに消費しましょう。シンガポールの卵が日本と比べて賞味期限が長いのは、生で食べることを想定しての賞味期限設定ではない為です。
ところで、サルモネラ菌の心配なく「TKG(たまごかけご飯)を食べたい!」となっ た場合、一般に売られているものは、「しっかり火を通して消費」ということを国からも勧められているので、このような食べ方で食べる場合は自己責任という名の元においてです。生食的な食べ方をする場合は、日系スーパーで販売されている日本産の卵、もしくは、シンガポールの鶏卵場が、日系スーパーで販売している「TKGや、すき焼き」等の用途に合わせて熱殺菌処理加工*を加えた卵が良いのではないかと思います**。
*Pasteurized製法になります:熱殺菌加工を施している為、この製法を加えた卵は厳密には生卵ではありません
**生食は体調とよく相談して、自己責任ご判断下さい。記事執筆者、J+PLUSが責任を負うものではありません
前回の記事はこちら
シンガポールの卵の話①:COVID-19 禍での卵騒動
続きはこちら
シンガポールの卵の話③
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ケルニン青木康子 さん
食のイベント会社Spoonful代表。シンガポールでメディアに7年勤務後、「食」を通して人と人、社会と社会をつなぐ食イベントブランドSpoonfulを2014年に企業。ライフワークとして、シンガポール料理の調査、研究を手がける。