2020.07.30
シンガポールで食べること
~シンガポールで「食べる・料理」時間を更に楽しく大切に~
シンガポールの卵の話① COVID-19禍での卵騒動
シンガポールでは、鶏卵の1人あたりの消費量は2012年から2019年に17%増加し、鶏卵の総輸入量は同時期に約3億200万個増加しました。シンガポールは国内の食糧自給率が10%未満ですが、卵は26%ほど国内で生産されています。残りの74%は輸入に頼り、日本も含め、世界11か国から卵の輸入をしています。多くはマレーシア(全体輸入量の73%)からですが、2004年に鳥インフルエンザが発生した際に、シンガポール政府はマレーシアからの輸出を止めた為、鶏卵輸入業者はマレーシアだけに頼らない、安全に卵を輸入できる方法を政府機関SFA(Singapore Food Agent)の力も借りて模索しています。需要高に答えるように、過去3年間でシンガポールへの卵の輸出を承認された国と農場の数は50%以上増加し、最近では6月5日にポーランドから初めてシンガポールに向けて卵が出荷されました。このように卵に供給は安定していたかに見えたのですが、今年、4月にはCOVID-19の影響を受けて、卵の供給元から十分な輸入ができなくなり、卵の値段が上がり始めました。
輸入元業者は韓国やポーランドとまで折衝し、供給元の確保に努めましたが、CB(サーキットブレーカー)期間中に、飲食店での利用が大きく落ちた為に、卵の飲食店業界での需要が減ってしまい、今度は逆に卵の需要が減り、供給過多になり、販売価格は下落しました。全体の市場でみると、消費者にとっては、卵の種類が増え、選択肢の幅が広がって良かったのですが、輸入元の中には、この影響を受け、25000個の卵を捨てざるを得なかった業者も出てきました。
因みにどこの国からの輸入であってもシンガポールでは「屋外で平飼いで買われている卵」の販売は一切出来ません。この為、「カンポン*エッグ」も然りで、カンポンと聞くと、屋外で走り回り、餌を啄む鶏が産んだ卵の様に想像してしまうかもしれませんが、屋内で管理、飼育されている鶏の卵になります。屋外での鶏卵飼育が認められていないのは「鳥インフルエンザ」を危惧しての為です。
*カンポン=マレー語で田舎の意味のイメージが強い為に、ここを間違って認識してしまいがちですが、カンポンチキンというのも平飼の鶏ではなく、カンポンという種類の鶏です。
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シンガポールの卵の話②:COVID-19禍での卵騒動
シンガポールの卵の話③
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ケルニン青木康子 さん
食のイベント会社Spoonful代表。シンガポールでメディアに7年勤務後、「食」を通して人と人、社会と社会をつなぐ食イベントブランドSpoonfulを2014年に企業。ライフワークとして、シンガポール料理の調査、研究を手がける。