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2020.05.29

サーキットブレーカー期間中(4月7日~6月1日)の飲食店に許された営業方式はデリバリーと持ち帰りのみで、中には期間中の営業を取りやめた店舗もあります。デリバリーと持ち帰りでは営業してまで経営的に立ち行かない事情もあるのです。

The #savefnbsg Communityが訴えた利益率数値


通常飲食店で利益率が高いのは飲料です。しかし、その場で食事をしないと飲み物はなかなか売れません。また、シンガポールの主要フードデリバリープラットフォーム*を利用する場合は手数料が売り上げの25~32%かかります。平常時のようにレストランで食事ができ、デリバリーも併用できるのならよいかもしれませんが、売り上げの大半がデリバリーとなった場合、この手数料は大きな負担になります。
*主要3社:GrabFood, Deliveroo, foodpanda

参照資料:©Statistics Singapore 2020年3月時点での飲食店業界全体の売り上げは前年比に比べ-23.9%


政府からの支援で5%の手数料補助負担も出るようになったものの、多くの飲食店にとってはフードデリバリー会社の高額な手数料に不満を抱いており、4月には600店舗以上を束ねる飲食店有志グループ(The #savefnbsgCommunity)の業界関係者・個人2,500人が署名する嘆願書が政府に出されたほどです。フードデリバリー会社のプラットフォームには、プラットフォーム維持費、マーケティング、決算システム、デリバリー料まで含まれているので、なかなかこのコミッションを下げるのは難しいでしょう。しかし、嘆願書によると多くの飲食店が手数料を15%まで抑えたいと希望しているようです。

飲食デリバリー会社foodpandaのマネージングダィレクターがCNAのインタビューで「手数料が従業員であるデリバリードライバーの給与に還元されているからこそ、社で安定したマンパワーを維持でき、継続したサービスが提供できる」と語っていました。デリバリーサービスを提供する側の見解も一理あります。

参照資料:©Statistics Singapore 2020年4~9月までの上期の営業収入予測は2010年10月~2020
年3月の下期に比べて―88%


また、政府からは飲食店向けには従業員(シンガポール人、PR限定)の給与の一部を補填する補助もありますが、飲食店の中には通常の売り上げの90%落ちという店舗もあり、従業員の勤務日数を減らしたり、CB期間に有給消化をしてもらったりと各社がなんとか従業員の雇用を守りつつもマンパワーのコストセーブを工夫しながら2カ月を保っているという状態です。

今後の政府の予測する数値も決して明るいものではなく、2020年は飲食店にとっては大試練の年であることは間違いありません。



ケルニン青木康子 さん

食のイベント会社Spoonful代表。シンガポールでメディアに7年勤務後、「食」を通して人と人、社会と社会をつなぐ食イベントブランドSpoonfulを2014年に企業。ライフワークとして、シンガポール料理の調査、研究を手がける。