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2020.03.30

 皆さんは野菜・果物といった青果を購入する際に何を基準に選んでいますか?安全性、値段、鮮度、人によって選ぶ基準は異なると思いますが、生産元が良い農場であることを立証する「GAP」はご存知でしょうか。GAPとは「GoodAgricultural Practice(農業生産工程管理)」の略で、農業において、食品安全、環境保全、労働安全、人権保護、農業管理等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組のことです。第3者機関がそれぞれの認証基準に基づいた農業の取組についての審査を通った農場に与えられるのがGAP認証です。

先日、ASIA GAP推進の為に農林水産省はじめ関係者の方々とシンガポールの青果取り扱い業者とのミーティングのお手伝いをする機会がありました


 驚くべきことに、日本では年間の農作業中事故死亡者数は304人(2017年度)、農業従事者10万人に対して、16.1人という(全産業では平均値1.5人)大変高い死亡率です。多く消費者が「食品の安全」に対しての意識は高いと思いますが、食の安全の為には食品を提供する側の人権や労働の安全、そして環境の安全への配慮が必要不可欠という点にまで意識が向かない、または知られていないのも事実です。

 GAP認証を受けている農場=生産工程管理に安全・安心基準の高い「良い農業をしている農場」となりますので、認証を受けている農場の農作物を購入することは今後の買い物時の判断基準になるのではないでしょうか。規模感がいきなり大きくなりますが、タイムリーな導入例は、オリンピックです!オリンピックにおける食材提供には、2012年のロンドン大会から「GAP」の認証を受けることが求めらるGLOBAL GAP*基準が採用され、農産物の質や安全性だけでなく、持続可能性に配慮した農産物が求められるようになりました。
*G GAP(グローバル・ギャップの略)は、Global Good Agricultural Practice:ドイツに本部をおく120か国で導入されている大規模なGAP基準

 GAPは世界中それぞれの国や地域でいろいろな種類がありますが、東京オリンピックでは、GLOBAL GAPのほか、ASIA GAP**、J GAP***が認証対象となっています
**ASIA GAP(アジア・ギャップ): ASIA Good Agricultural Practice: アジア基準のGAPをアジアに広めるためにできた日本発の認証基準。
***J GAP(ジェイ・ギャップ)は、Japan Good Agricultural Practice:日本初の認証基準。

※東京オリンピックでGAP認証がない国産の野菜をPRするこ為に、東京オリンピックのGAP基準の一つに加えられたという背景がある。

シンガポールGAPの認証を受けているKoh Fah Technology Farm Pte Ltdの農園


 因みにシンガポールにも地場基準のGAPがあります。認証農場例として、Koh Fah Technology Farm Pte Ltd、Meihwa Engineering Pte Ltd、Oh Chin Huat Hydroponic Farms Pte Ltd、Sky Greens Pte Ltd、Yili Vegetation & Trading Pte Ltdなどがあげられます。認証されている農場エリアはSFA (Singapore Food Agent)のWEB(www.sfa.gov.sg)を参照ください。

参照リンク:
Singapore Food Agent
農林水産省
一般社団法人日本GAP協会
SMART AGRI



ケルニン青木康子 さん

食のイベント会社Spoonful代表。シンガポールでメディアに7年勤務後、「食」を通して人と人、社会と社会をつなぐ食イベントブランドSpoonfulを2014年に企業。ライフワークとして、シンガポール料理の調査、研究を手がける。