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2021.02.01

聞こえていますか?あなたの心の叫び!!

シンガポールはフェーズ3に入り、COVID-19に対する規制も緩和されてきました。しかし、海外へ気軽に行けるわけでもなく、不自由な生活がいまだに続いています。そんな窮屈な生活をし続けることで体調を崩す人も多いと聞き、ラッフルズ・ジャパニーズ・クリニックへお話を伺ってきました。対応してくれたのは、小児科の元田医師と総合診療・心療内科の日暮医師です。今回は主に心の問題について教えていただきました。



小児科
院長 元田 玲奈 医師(医学博士)
東京大学医学部卒業
東京大学大学院医学系研究科修了、医学博士
2008年10月より現職

日本小児科学会認定小児科専門医
日本小児神経学会会員
小児科医会認定「子どもの心」相談医


総合診療・心療内科・糖尿病/代謝/内分泌内科
日暮 真由美 医師(医学博士)
一橋大学社会学部卒業
千葉大学医学部卒業・同大学院修了、医学博士
千葉大学医学部糖尿病代謝内分泌内科所属、関連病院勤務
国立国際医療研究センター病院心療内科研修
2005年よりシンガポール日本人会クリニック勤務
2020年6月より現職

日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
日本糖尿病学会専門医
Graduate Diploma in Mental Health(シンガポール国立大学)
日本心療内科学会会員
日本プライマリケア学会認定医・指導医
日本医師会認定産業医


海外ならではの心の問題にはどのようなものがあるでしょうか?
日本とシンガポールでは症状の違いはありますか?

日暮医師(以下:敬称略):シンガポールは東京とほぼ同じで20~40代の方が適応障害に悩まれる症例が多くみられます。
 適応障害はストレスが原因で引き起こされ、そのストレスに対して猛烈に頑張ってしまい、その結果エネルギーがなくなり、頭が動かなくなったり体が動かなくなるという症状です。精神状態としては一見うつ病に似ているのですが、“何がダメなのか”、“何がストレスとなっているのか” など、原因がはっきりしているという特徴があります。
 海外で働く皆さんは基本的に真面目で一生懸命な方が多く、そういった性格の方にリスクが高いようです。“適応障害” と呼んでいますが、「適応できない」というよりは「適応しようとし過ぎてしまう」と患者さんには説明しています。
 駐在員の方は日本から送り出されてきているという “使命感”、ローカル採用の方は “海外で頑張ろう” という意気込みから「頑張らないわけにはいかない」という気持ちなんだと思います。

元田医師(以下:敬称略):その人の持っているベースが環境に合わない場合があるじゃないですか。これは誰のせいでもないんですよね。
 小児科は日本とは少し違っていると感じています。独特な日本人コミュニティーがお母さん達のストレスになっていることが多いようです。小さなコミュニティーなので、“自分が放った一言が自分の子どもや夫のコミュニティーに響くかもしれない” と思うと何も言えなくて、窒息しそうだと話された方もいました。
 また、日本で働いていて専業主婦になる方も多いので、子どもとの関係がギクシャクしてしまうこともあります。子どもは常に親に監視されている気持ちになり、また親も今まで気づかなかったことが目につき、イライラしてしまったり、母子がぶつかり合ってしまうんです。日本のように身近に親戚など頼れる人がいない環境も大きいと思います。

母子問題の場合、お子様だけに症状が現れるのでしょうか?

元田:いいえ、共倒れが多いですね。子どもの診察をしていると “これは子どもだけの問題ではない” ことがわかります。どちらかだけということは少ないです。お母さんが落ち着くと、子どもも自然と落ち着いてきます。

日暮:小児科を受診されたお子さんのお母さんが、私のところに来られることも多いです。

元田:小児科で母子共に治療することもありますが、単独でサポートが必要だと判断した時は日暮医師にお願いしています。お母さんはお子さんのこと以外にもいっぱい抱えていることがあります。お母さん自身の特別な時間として受け止めてあげることが必要だと思います。

お父さんの立場ではいかがでしょうか?

日暮:仕事などのストレスもあるため、お父さんもいっぱいいっぱいになっています。

コロナ禍で相談内容に変化はありますか?

日暮:常に家族と一緒にいる生活になり、夫婦関係の相談がこの半年間で増えていますね。最初は奥様が相談に来られることが多いです。お父さんが、子どもとお母さんが荒れているということを悩み、それを全部受け止められなくなり、その結果、夫婦間が上手くいかなくなってしまうこともあるようです。

元田:いい変化もあると思います。在宅勤務となったことで今まで見ることのできなかった実際の子どもの様子を目の当たりにし、理解を深めたという家庭もあります。
 子どもの場合ですと、オンライン授業が合う子と合わない子がいます。今まで学校に通っていて負担だったことがオンライン授業によって落ち着いたという子もいれば、逆にオンライン授業だと全く集中できなくてストレスが溜まってしまう子もいます。オンライン授業に関係するストレスは、今多く見受けられる症例の一つです。

日暮:一人でいるのが好きな子やコミュニケーションを取るのが苦手な子がみな “オンライン授業が合う”、とは限らないという不思議な現象ですね。
 大人の場合ですと、リモートワークが増えたことで顔を知らない人とのオンライン上でのコミュニケーションに苦労される方がいます。在宅でいつまでも仕事をしてしまう過重労働も多くなっていますので気をつけてほしいです。
 また “喉に違和感がある”、“喉が詰まった感じがする” と訴える方が増えました。“ヒステリー球” という病名のストレス性疾患です。実際はコロナとは関係ないのですが、「コロナにかかると喉に違和感が出る」というネット情報を受け不安から始まった人もいます。

心の問題を抱えた方の診療に関して
どのような症状が現れますか?またどのような治療になりますか?

日暮:眠れなくて頭が回らない、仕事の効率が落ちている、忘れっぽくなったなど、自分でおかしいと気づかれ来院する方もいます。頭痛、耳鳴り、動悸、痺れ、胃痛、下痢などもそうですね。他の病気のような身体の症状が心身症状といわれるものです。初めは耳鼻科や内科を受診され、心療内科に回ってくる方も多いです。当クリニックではいろんな診療科からのアプローチが可能です。
 適応障害の基本は原因がはっきりしていることが多いので、その原因から離れることができれば薬を使わなくても改善していきます。休める時間の長さや本人の疾患の重さにもよりますので、実際には休むことをベースにしながら投薬についても考えていきます。

元田:ツムラの漢方を処方していて、製薬ではないので患者さんも抵抗感が少ないようです。漢方は安全性が高く副作用も少ないため、受け入れやすいと思います。
 「ここに来ると調子がいい」、「これを飲むと調子がいい」と感じることから治療は始まっています。いわゆる“プラシーボ効果”ということですが、これは自分の持っている力、生命力がプラスに働いているんです。“先生の顔を見て安心” と思っていただければ、治る一歩が始まっているのと同じなんだと思っています。

最後に
運動をすると良いと聞きますが、本当でしょうか?

日暮:運動はとっても良いです。運動するとポジティブな化学物質が出やすいですし、運動している時に働いている脳が普段と違う場所だからです。ぐちゃぐちゃと考え込んでしまう脳の働きを弱めてくれる効果があります。症状が改善に向かっている方が運動を少し取り入れると、ぐーんと調子がよくなることもあります。運動に限らず、ご自身が好きなことだったら何でも効果がありますよ。
 ただし、あまりお勧めできないのは英語などの外国語の勉強をすることです。休んでいる間に少しでも今後に役立つことをしようと考えてしまい、ビジネス書や語学の勉強を始める方がいますが、症状は改善されず長引いてしまいますので、よろしくないです。外国語を使うのは運動などとは違う脳の場所なので、余計なエネルギーを使ってしまうんだと思います。

先生方はどのようにしてメンタルを保っていらっしゃるのですか?

元田:私は子ども達を見ていることかな。一番メンタルを保っていられると思ってます。子どもはエネルギーなので、助けられることが多いです。赤ちゃんに触れるだけで癒されますね。患者さんに助けられていると思います。

日暮:今は “Netflix” ですね。家に帰ったらずっと観ている感じです。何にも嫌なことを考えないことが一番です。心の病気というよりは、実際には脳の疲れの病気ですから。脳を休めてあげてください。

元田:自分を甘やかすことが大事なのかなと思います。“自分が危ないな”、“調子悪いな” と思った時に自分に距離をとってみたり、甘やかしてみるなど自分で工夫してみることが良いのかなと思います。
 脳だって体の一部ですから、特別な病気だと思うのではなく、風邪を引くのと同じことだと思ってもらえるといいのになと感じています。

 


ラッフルズ・ジャパニーズ・クリニック
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診療時間(受付 8:45 ~):月~金 9:00~18:30、土 9:00~12:00
休診:日・祝
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