• 本荘そのこ 医療コラム
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2016.06.24

日本人女性の41 %は、がんに羅患する時代。がんになったとき、大切なことは“最高の治療” を受けられるかどうか。医療ジャーナリストの本荘そのこが、自らのがん経験をもとに、女性週刊誌記者として取材を重ねてきたデータと、最新情報を、シンガポールに暮らす貴女にシェアします。

30代から増え始める乳がんはどうやって見つかるの?

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「これ、なんだろう?」私が左胸にしこりを発見したのは34歳のとき。小豆粒大のしこりが人差し指に触れた、その数日後には乳腺専門医のいるクリニックへ駆け込み、エコー(超音波)とマンモグラフィー検査を受けました。この検査を受けるのは人生初でしたが、2枚の透明な板に胸を挟んで薄くして乳腺を検査するマンモグラフィーは衝撃的な痛みを伴いました。こうして大変な思いをした甲斐があり、まずはシロの判定をいただきホッとひと安心。けれど、ドクターが「念のため」と『穿刺吸引細胞診』という針でしこりの部分の細胞を採取する検査も受けてこれも結果は良性。結婚が決まっていたことを知っていたドクターからは「よかったですね~」と労われ晴れて無罪放免に。

「ああ、よかった。やっぱり私は大丈夫なんだ」と心底安堵したのですが……。それは束の間のこと。

しこりは猛スピードで5倍の大きさに成長。「なぜだろう?」と再び同じクリニックへ行くと、今度は「膿んでいるみたいです」と抗生剤を投与されたものの、しこりは大きくなるばかり。「うーん。どうにも腫れが引かないね。少し切開して膿を出しましょう」と悪夢のような展開に。結局、乳がんと確定診断を受けるまで、さらに3ヶ月を費やしました。このときの切開でかなりがんが散らばり、もう助からないと思ったことも……。よく治ったものだと思いますが、同じ病気を経験した方々と話をしていると、紆余曲折を経てようやく診断がついたというケースは珍しくありません。私の友人は「これは間違いなく良性!」と区の無料検診で太鼓判を押され1年放置していたものの、就寝中に胸に激痛が走り飛び起きたそうです。

第六感で「がんなんじゃないの!」と確信し、今度は乳腺クリニックへ赴き検査を受けたところ結果は悪性でした。

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がんのほうが知らせてくれるということもあるのですね。また一方で、思いがけずがんが発見されるケースも。親戚の女性は、ある霊能者から「あなたは苦労が多いから、このあたりにがんが視える」と言われ半信半疑で最新鋭のPET・CTを受けたところ、本当に1㎝以下のごく微小がんが発見されたのです。あとで分かったのですがこの霊能者は3人に1人の割合でそんな霊視をしているそうなのですが。

曰く「結構、がんって探せば見つかるもんだから~」ですって。なんて、適当な! と怒りたいところですがとりあえず超早期発見をしてもらったわけで、がんとはとにかく不可思議なシロモノのようです。なので、「気になるしこりがあるけれど、良性と診断されているから」という人はいまいちど別の専門医に診てもらうことをお勧めします。日本の乳がん治療界のオピニオンリーダーといわれる昭和大学病院ブレストセンター長の中村清吾先生はこう説明します。

「12人に一人が乳がんに罹患する時代ですが、これは啓蒙活動の広がりで早期発見率が上がったことにもよります」とも。

中村先生には幾度も取材をさせていただきましたが、乳がん医療は日進月歩でいまや「進行の早いがんとゆっくりながんがあり、遺伝子検査によってそれを確定し、治療後の再発予測などができるようになっている」とのこと。残念ながら保険の効かない検査なのでお高いのだとか。また日本では北斗晶さんをはじめ、生稲晃子さん、つい先日は南果歩さんといった芸能界で活躍する女性たちが自らの乳がんを告白し検診の大切さを訴えて、受診率がまたグンと上がっていることもあります。検診率が低かったのにはやはり、検査の大変さがあるのでしょう。私もマンモグラフィーは一度受けたら「もうコリゴリ」と思いましたが、実は月経の前は痛みが強く、月経後はさほど痛みを伴わないという説があります。

私は「痛いから、もう受けたくないです!」と正直に主治医に訴えたところ、「ベテランの技師さんにしてみましょうね」と配慮していただき、そのときはほとんど痛みを感じず。熟練度によっても差があると確認したのです。乳がんの罹患者数を見ていくと30歳くらいから増え始め45歳~49歳がピークを迎え、その後少しずつ減ってくるという曲線です。なので「30前後からは自己チェックを怠らないように」と中村先生も毎月1度の触診による自己検診を呼びかけています。私も、自分で探したまでは良かったのですが……。

いずれにせよ、乳がんはたとえ進行していたとしても果敢に治療すれば治ることの多くなったがんなので、発見することから全てがはじまります。発見を恐れずに探してみてください。


 

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Honjo Sonoko

医療ジャーナリスト。69 年生まれ。週刊誌記者をしていた34 歳のときに乳がんに罹患し、約9 カ月間に渡って治療を受ける。現在、がん医療の分野を中心に、取材・執筆・講演活動を行い、著書に『がんに不安を感じたら読む本』(光文社新書)などがある。1女の母。