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2020.07.08

海外で仕事や生活をする日本人が気になるのが、病気やケガ、薬や予防接種など。日系医療機関『ジャパングリーンクリニック』が、日本を離れて暮らす在留邦人のご参考のため、同クリニックの診療経験を踏まえて、日本人に見られる病気やケガなどさまざまな医療と健康管理のお話をお届けします。

細菌とウィルスの中間的な大きさの「マイコプラズマ」という微生物が原因で起きる肺炎をマイコプラズマ肺炎と言います。先日開催された日本小児感染症学会において、日本においてはマイコプラズマ肺炎が過去10年間で最大の流行だったと報告されました。当地でも多くの症例を経験します。今回はマイコプラズマ肺炎について解説しましょう。


オリンピックとマイコプラズマ肺炎

昨年リオデジャネイロ・オリンピックが開催されました。マイコプラズマ肺炎は、かつては周期的な大流行を繰り返し、その流行のタイミングが4年に1度のペースとなっていました。それが、ちょうど夏季オリンピックの開催年に重なっていたことから、一部では「オリンピック病」と呼ばれたこともあったのです。

子どもや若者に多い肺炎

マイコプラズマ肺炎は、特に子どもや若者に多くみられる代表的な肺炎のひとつです。近年の報告では、全体のうち約80%が14歳以下で発症しており、そのピークは小学校低学年になっています。

発症までに2~3週間

マイコプラズマは、感染してから発症するまでの潜伏期間が長く、約2~3週間(最大1か月程度)もあります。このため、人が多く集まる保育園や学校、会社、病院などでは、施設内で流行が始まると、それが落ち着くまで何か月もかかってしまうことがあります。

マイコプラズマ肺炎の症状

マイコプラズマ肺炎の症状で代表的なのは発熱と咳です。咳は、 乾性咳嗽(かんせいがいそう )と呼ばれ、 痰(たん)を伴いにくい傾向があります。そして、発熱から数日遅れて出現することもあり、熱が下がっても頑固な咳が長く続くことが多いようです。体のだるさや頭痛、筋肉痛や関節痛などを伴うこともあります。

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呼吸器以外の合併症も

その他にも多彩な症状を合併することが知られています。例えば、中耳炎によって耳の痛みなどの症状が起こることがあります。また、皮膚に特徴的な発疹が出ることもあります。さらに脳炎、肝炎、心筋炎、あるいはギランバレー症候群という神経の麻痺症状など、様々な合併症も報告されています。

診断を確定させる検査

詳しい問診と診察はもちろんですが、胸部レントゲンで特徴のある所見がヒントになる場合が多いようです。また、診断確定には、採血によるペア抗体、IgM抗体迅速検査など、いくつかの検査方法が利用されます。ペア抗体というのは、感染初期と一定期間以上経過した時の血液中の抗体を測定するものです。抗体というのは、病原体と闘った時に体の中に作られるものなので、その数値が高くなっていれば感染していたということが判明します。しかし、これでは診断までに時間がかかってしまいます。そこで、広く利用されるようになっているのがIgM抗体迅速検査です。この検査は、すぐに結果がわかることが利点ですが、やや検査結果の信頼度に問題があります。近年では咽頭拭い液や痰から直接菌体の存在を証明する方法がいくつか試されています。

治療

マイコプラズマ肺炎は、軽症であれば未治療で治ります。しかし、比較的重い肺炎を起こした場合は抗菌薬による治療が必要になります。効果がある抗菌薬は、菌の性質上限られてしまいます(マクロライド系、ニューキノロン系という種類の抗菌薬が多く選ばれます)。近年は、マクロライド系抗菌薬の効かない耐性菌の増加が大きな問題となっています。もともと薬の選択肢が少ない上に、耐性菌の増加は注意が必要です。
周囲の流行状況も考慮しながら、頑固な咳が続く場合は医療機関を受診し適切に診断を受けて早期に治療することは大変重要です。