• Singapore Youth Report
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2017.01.18

シンガポール国立大学(NUS)語学教育研究センター(CLS)の日本語履修生が、日本語でいま興味があるカルチャーを伝える「Singapore Youth Report」。今回は宮部みゆきの「火車」の感想文をお届け。


「火車」(宮部みゆき)を読んで

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私は宮部みゆきさんの「火車」という本を皆さんに紹介したいと思います。皆さんはクレジットカードを何枚持っていらっしゃいますか。クレジットカードには買い物からローンに至るまで様々な機能があります。クレジットカードは現代人にとっては便利で不可欠なもので、皆さんも何枚も持っているはずでしょう。ところが、私は一枚も持っていません。なぜかというと、自制心がなさすぎて好きなだけアニメグッズを買ったりして、借金するタイプですから、クレジットカードに対して警戒心( けいかいしん) を持っているんです。

この「火車」という本はバブル経済が崩壊( ほうかい) した時期に書かれたある失踪した女性の話です。彼女はなぜ消えてしまったのか? その謎を解くカギはカード会社の犠牲になったともいうべき自己破産者の悲惨( ひさん) な人生に隠されていました。

この小説には色々な「戦い」の意味が含まれています。まず、当時の女性と社会的プレッシャーとの戦いです。主人公の女性は一生OL のままで、仕事の能力が同僚や家族に認められず昇進も昇級もない彼女たちがどのように女性差別と戦ったのか、書いてありました。2 つ目に、マイホームやブランド品を買いたくて借金した人の例によって自らの物欲との戦いを表していました。3 つ目の戦いは「情報源」あるいはメディアとの戦いです。様々な広告宣伝で視聴者( しちょうしゃ) の購買意欲をそそります。皆さんも買う必要がないことを知りつつも、広告を見て、結局「買わされてしまった」経験が誰でもあると思います。
実は、「火車」は人を乗せて地獄に運ぶ、火の燃えている車という意味です。気軽に借金ができたら、借金地獄に陥ってしまうかもしれません。だからこそ、身の丈に合った金銭感覚を幼い頃から身につけることは大切だと思います。

私たちはある意味で毎日戦っています。どうやって、このような物欲との「戦い」に勝つことができるのでしょうか。この本を読めば、自らの物欲と戦う方法が見つかります。借金地獄に陥らないように、自分の判断力を養いお金を大切に使いましょう。


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シンガポール国立大学で日本研究を専攻しているシャーリン・リオンと申します。中毒ともいえるほどのアニメ・マンガ大ファンです。今、文豪ストレイドッグスというアニメの「中原中也」に熱中しているので、アニメを見ることだけではなく「中原中也」のキャラグッズも大量に集めています。