• シンガポールで食べること
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2021.07.30

<市場についての背景>
 世界の人口は国連の試算では2021年の77億人8800万人から2030年には85億人、2050年には97億人、2100年には110億人へと増加するとされています。

 急速な人口増加速度に対して、現在の私たちの食事の摂り方(ダイエット)が変わらなければ、世界は未曽有の食料危機に見舞われることが予測されます。身体を形成する為に必要なタンパク質源摂取を動物性たんぱく質に頼るには、時間(飼育)もかかり、また環境への負担も大きいものです。

鶏・牛を植物性たんぱく質に置き換えた場合の環境への負担減予測率 参照元1:Good Food Institute

そこでより生産の時間をセーブし、環境にも優しい、植物由来のプラントベースの代替食品や、クリーンミートの生産の重要性に世界中が注目しています。また、2018年に119億ドルだったプラントベース肉の世界市場の規模は、2025年には212億ドル (成長率78%)になる と言われ、世界中が注目をする市場です(参照2)。

<シンガポールでの動き>
 シンガポールは、2030年までに国内食料自給率を現在の10%ほどから30%にあげる、「30 by 30(サーティー・バイ・サーティー)」政策を掲げています。

 土地がなくてもラボがあれば作り出せるクリーンミートは、シンガポール政府の意向と合致し、国を挙げてクリーンミートの生産を押しています。

 2020年12月にシンガポールは世界で初めてクリーンミートの販売許可を認め、アメリカ企業で、シンガポールにもラボを構える、Eat Justが一般向けに試食会を行いました。クリーンミートは未だ生産に時間もコストもかかる為、市場に出回るには2022年の後半ごろと予測されています。

 2020年11月にはSIBI(Singapore Institute of Food and Biotechnology Innovation/シンガポール食料・バイオ技術革新研究所)がシンガポール科学技術研究庁(A*STAR)傘下に設立されました。

 SIBIでは食全般の研究、バイオトランスフォーメーション、発酵、安全、栄養分析等をテーマとした食の総合研究所になります。スタートアップとの共同研究も進め、アジア太平洋地域における食糧安全保障の確立の為のHUB的研究所を目指しています。

 2021年4月にはスイス企業2社、Bühler & Givaudanが世界規模でプラントベースの開発を行うことができる研究所を共同でシンガポールに設立。スイスのR&Dイノベーションセンターや地域の主要なハブとの幅広いネットワークとつながり、世界規模でプラントベースの開発を機動的に行うことを推進しています。

*プラントベース、**クリーンミートに関しては、様々な言われ方がありますが、定義の幅が広いこともあり、本文ではわかり易く上記で統一させていただきます。
参照の引用元1:https://gfi.org/wp-content/uploads/2021/01/sustainability_cultivated_meat.pdf
参照2の引用元:https://www.maff.go.jp/j/jas/attach/pdf/yosan-27.pdf



ケルニン青木康子 さん

ケルニン青木康子/食のイベント会社Spoonful代表。シンガポールでメディア会社に7年勤務後、「食」を通して人と人、社会と社会をつなぐ食のイベントブランドSpoonfulを2014年に起業。ライフワークとして、シンガポール料理の調査、研究を手がける。
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