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2016.06.17

海外で仕事や生活をする日本人が気になるのが、病気やケガ、薬や予防接種など。日系医療機関『ジャパングリーンクリニック』が、日本を離れて暮らす在留邦人のご参考のため、同クリニックの診療経験を踏まえて、日本人に見られる病気やケガなどさまざまな医療と健康管理のお話をお届けします。

本年4月に熊本県を中心として発生した地震により、多く方が亡くなりました。地震そのものによる被害も大きかったものの、地震とは直接関係のない「災害関連疾患」による影響も懸念されています。その中でも生命にかかわる疾患として「エコノミークラス症候群」が注目されています。


「エコノミークラス症候群」は、主に長時間の飛行機による移動中に、特に下肢の静脈に血の塊ができ(深部静脈血栓症)、それが心臓を経由して肺の動脈に詰まる(肺塞栓症)ことを言います。エコノミークラスで動きが比較的制限される場合に発生しやすいとされていることからこの名前がつきましたが、搭乗するクラスにかかわらず発生するので今では「ロングフライト血栓症」といわれ始めています。ただ、現在のところ一般には「エコノミークラス症候群」として認知されています。

ちなみに「エコノミークラス症候群」は、飛行機の搭乗のみならずバスや車での移動や、劇場や映画館などで長時間、同じ姿勢で座っている状況などでも発生します。また今回の地震で起こった状況のように、動きの制限された車の中や避難所の中に長期間いるときも発生します。

これを読まれている方には、長時間の飛行機による移動を頻繁に経験する方が多いと思います。「エコノミークラス症候群」の発生の原因として、第一に脱水が挙げられます。湿度の低い機内で皮膚が乾燥したり、コンタクトレンズがごろごろしたりする程度の不快感で済めばいいですが、問題は目に見えない汗による脱水です。機内で肺と皮膚から失われる水分は1時間に80ccで、5時間のフライトでは400cc、10時間では800ccの水分不足を起こし、体内の血液が濃くなります。さらに狭い座席に長時間座り続けると血流が停滞し、ふくらはぎの深部静脈に血栓が出来やすくなります。

血栓が静脈と心臓をへて肺に移動し、そこで詰まると肺塞栓となり、胸痛や呼吸困難が起こり、中には死亡するケースもあります。これが「エコノミークラス症候群」ですが、先ほど述べたとおりエコノミークラスに限らず、水分不足と運動不足という条件が揃えば、ファーストクラスでもビジネスクラスでも発症します。特に高齢の方、肥満気味の方、産後1カ月以内の方、大きな手術を受けて2〜3カ月の方は注意が必要となります。

多くの場合、到着間際の機内や到着した空港で発症します。しかし、旅行から1〜2週間後に、帰宅した自宅で起こることもあるので、ロングフライト後2週間以内の心筋梗塞、心不全には要注意です。

「エコノミークラス症候群」の予防としてさまざまなことが言われていますが、例えば日本旅行医学会では次の7つの予防策を提唱しています。

JGH19May

2〜3時間ごとに歩く(機内では、少し離れたトイレに行く。スペースを見つけ、下肢の屈伸運動をする)

②座席に座ったままでかかとやつま先の上下運動と腹式呼吸を一時間毎に3〜5分行う

③水分をまめに摂取する(ミネラルウォーターか、薄いお茶が望ましい。アルコールは脱水を助長するので避ける)

④ゆったりした服装(男性は、機内ではズボンのベルトを10cmほど弛める。女性はきつい下着を避け、ゆったりした衣類を着用する)

⑤足は組まない(血行を悪くするため)

⑥睡眠薬は使用しない(不自然な姿勢で寝てしまうため)

⑦座席は通路側に座る

いずれにしても、長時間の飛行機による移動の場合、水分を充分に補給し、こまめに動くことを心がけましょう。

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情報提供先:ジャパングリーンクリニック
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